発酵食品で健康になる

by MatsudaTateki

歴史的に発酵食品は多くの文化圏で親しまれている背景には大きな理由があります。発酵は食品の長期保存を可能にし、栄養価を高めることもできるプロセスです。西洋ではヨーグルトやザワークラウトといったものから日本以外のアジア圏ではキムチやテンペなど、多くの発酵食品が食べられ続けてきました。それぞれの発酵食品には独特の風味や食感、そして健康に良い効果があります。
発酵の過程では、炭水化物やタンパク質が分解され、体内に吸収されやすいシンプルな分子になることで食べ物が変化していきます。この過程でビタミン、ミネラル、抗酸化物質などの有益な化合物も生まれます。
「腸内細菌叢の調節」プロバイオティクス、プレバイオティクス、ポストバイオティクスの投与や糞便微生物叢移植(FMT)などを用いて、微生物組成を修正することにより、腸内環境に有益な効果をもたらすこと。これらのアプローチはすべて、個人の生理・病理をよりよく管理するために、患者に合わせた治療によって最適化することができる。

腸内細菌叢

腸内細菌は消化管に生息する全ての微生物の集合体です。これらの微生物は消化、代謝、免疫など、人間の健康に重要な役割を担っています。腸内細菌叢の構成は個人差があり、食事、年齢、ライフスタイルなどに影響されます。発酵食品が健康に良い影響を与えるという研究結果が増えてきており、発酵食品は摂取することで健康上のメリットをもたらす生きた微生物「プロバイオティクス」の豊富な供給源となります。プロバイオティクスは腸内細菌のバランスを維持し、免疫系をサポートすることによって、腸の健康を促進すると考えられています。また、代謝を調整し、炎症を抑える働きもあるとされています。プロバイオティクスの働きに加え、発酵食品には酵素、ビタミン、ミネラルなど、その他の有益な化合物も含まれています。これらの化合物は腸の健康をサポートし、発酵食品の全体的な栄養価に貢献します。
食事は消化され、代謝され様々な前駆体となります、その過程でマイクロバイオーム(ヒトの体に共生する微生物の総称)は宿主の代謝において中心的な役割を担っています。発酵食品は腸の健康をサポートするプロバイオティクスやその他の有益な化合物を供給するため、マイクロバイオームにとって重要な栄養源となります。また、マイクロバイオームは腸の健康維持と代謝の調節に重要な短鎖脂肪酸の産生にも関与しています。短鎖脂肪酸は肥満やその他の代謝障害に関与していると考えられており、食事を通じてマイクロバイオームをより良くしていくことは、様々な疾患を治療するための戦略として、可能性を秘めた食事療法かもしれません。
発酵食品には消化の改善、栄養吸収の増加、免疫機能の強化など、健康上の利点が多くあることが証明されています。また、発酵食品は抗酸化物質の供給源であり、細胞の損傷を防ぎ、慢性疾患のリスクを低減させます。発酵食品の健康効果は発酵食品に含まれる有益な化合物の組み合わせによるものと考えられています。これらの化合物は腸の健康をサポートし、健康的な代謝を促進するように働きます。腸内に生息する微生物の集まりが消化、代謝、免疫に関与しています。発酵食品には有益な細菌が含まれており、健康なマイクロバイオームを維持し、免疫系をサポートするのに役立ちます。
更に発酵食品に含まれるプロバイオティクスやその他の有益な化合物は代謝を調整し、体内の炎症を抑える理由から、発酵食品を多く含む食事は肥満やその他の代謝異常の予防や治療に繋がる可能性があります。食事によってマイクロバイオームの生態を良い状態に保つことは、様々な疾患に対する治療法の一つとして注目されています。
マイクロバイオームは栄養素を供給するだけでなく、体内から毒素を排出する役割も担っています。腸内細菌は食物や環境に含まれる毒素を含め、私たちが日々接している多くの毒素を分解し、排泄する役割を担っています。このプロセスはBiotransformation(生体内変換)と呼ばれ、私たちの健康維持に役立つマイクロバイオームの重要な機能です。マイクロバイオームは複雑でダイナミックな生態系であり、私たちの食生活や環境に応じて常に変化しています。マイクロバイオームが代謝にどのように影響するかを理解することで、腸の健康をサポートし、代謝を最適化するための新しい食事法や治療法を開発することができるかもしれません。

発酵食品もいいところばかりではない!?

発酵食品の食べ過ぎ
発酵食品を摂取することで得られる健康上のメリットは数多くあります。しかし、摂取する前に副作用の可能性を知っておくことが重要です。
1. SIBO(小腸内細菌過剰症)とは、腸内細菌が増えすぎてしまった状態のことです。ガス、腹部膨満感、腹痛などの症状が出ることがあります。ディスバイオーシス(バランスが崩れた状態)も同様の症状ですが、腸内に存在する細菌の種類のバランスが崩れていることを指します。SIBOもディスバイオーシスも発酵食品の摂り過ぎによって引き起こされる可能性があります。
2. 頭痛や偏頭痛 発酵食品を摂取すると、頭痛や偏頭痛などの副作用が起こる可能性もあります。これは発酵中にヒスタミンが放出されるためと考えられています。ヒスタミン不耐症とは、体内でヒスタミンを適切に分解できない状態のことです。その結果、個人差や生まれつきで頭痛や偏頭痛、吐き気といった症状が引き起こされることがあります。
3. 食中毒 食品を媒介とする病気も発酵食品を摂取することで起こりうる副作用のひとつです。これは発酵プロセスが有害なバクテリアの繁殖を助長する環境を作り出す可能性があるためです。プロバイオティクスによる感染症も、発酵食品を摂取することで起こりうる副作用です。プロバイオティクスは発酵食品に含まれることが多く、生きた微生物です。ほとんどのプロバイオティクスは無害ですが、中には感染症を引き起こすものもあり、特に免疫力が低下している人は注意が必要です。
4. 抗生物質耐性も発酵食品を摂取することで起こりうる副作用のひとつです。これは発酵プロセスによって、バクテリアの抗生物質耐性遺伝子のレベルが上昇する可能性があるからです。抗生物質耐性は細菌が抗生物質の効果に対して耐性を持つようになることで起こります。これにより抗生物質の効果が薄まり、感染症の治療がより困難になる可能性があります。
これらの副作用を経験した場合は、医師の診断を受けることが重要です。プロバイオティクスと発酵食品が腸の健康にどのような影響を与えるかについては、まだ多くのことが分かっていませんが、これまでのところ、健康的な食生活の貴重な一部となり得ることが示唆されています。腸の健康は健康全般にとって重要な要素であり、腸内細菌叢を最適化することは健康を促進する一つの方法です。

適量の発酵食品を毎日の食事に

腸活
腸の健康のために発酵食品を積極的に摂取しようと思う方は、たくさんいると思います。キムチやザワークラウトなどの発酵野菜、ヨーグルトやケフィアなどの発酵乳製品もプロバイオティクスの優れた供給源です。欧米で流行っているコンブチャ(日本では70年代に流行った紅茶キノコ)は発酵させた茶葉から作られるプロバイオティクスを豊富に含む飲み物です。
日本の食文化に根付いているように発酵食品は日本人の食生活の重要な部分を占めています。大豆を発酵させた味噌は多くの日本料理で重要な材料として使われており、醤油、納豆、日本酒など今となっては海外で人気のある発酵食品です。
発酵食品の多くは食物繊維を多く含み、腸の健康を促進する効果があります。プロバイオティクスは腸内細菌のバランスを保つ働きがあるため、「善玉菌」と呼ばれます。繰り返しになりますが腸内細菌叢は人によって異なり、住んでいる場所、食べるもの、食べ方によっても異なります。発酵食品を食生活に取り入れるにはさまざまな方法がありますが、まずは週に2、3食を取り入れることから始めて腸内環境の反応をみてみましょう。発酵食品はあなたの健康全般をサポートする貴重な存在であることがおわかりいただけると思います。
*こちらの記事は松田干城が英語で連載している記事を日本語に翻訳したものです。>Fermented Foods for Health Optimization

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