免疫力を高める発酵食品

免疫力を高めるプロバイオティクスが豊富な食品は、感染症のリスクを軽減するのに役立ちます。発酵食品は、そのプロバイオティクスの優れた供給源として知られています。⁴

免疫システムと腸内環境の関係

免疫システムとは、細胞や組織、器官が複雑に連携して、体内に侵入する細菌やウイルスなどの有害な微生物から体を守る仕組みです。腸内には多くの異物が存在するため、腸の健康は免疫機能にとって非常に重要です。腸内フローラ（腸内に生息する細菌）は、免疫機能に不可欠な存在です。¹

プロバイオティクスは、人間の腸内に存在する有益な微生物と類似した生きた微生物です。これらを豊富に含む食品は、免疫機能を向上させ、感染リスクを低減するのに役立ちます。¹ 発酵食品は、プロバイオティクスの優れた供給源です。

Probiotics maintain gut epithelial barrier.

発酵食品の効果

発酵食品にはプロバイオティクスが豊富に含まれています。これらの微生物は、腸内に定着し、宿主の微生物叢の構成を変える有益な活性微生物です。最近の研究では、プロバイオティクスが腸内微生物叢の組成に重要な役割を果たし、病原菌の定着を抑制し、健康な腸粘膜保護層を構築するのを助け、免疫システムを高めることが明らかになっています。¹ そのため、発酵食品を定期的に摂取することで、強くて健康な免疫システムを維持できる可能性があります。

科学的研究では、プロバイオティクスや植物化学物質などの機能性天然物を食事に取り入れることで、腸内細菌叢を調整し、免疫機能の向上、炎症反応の調整、健康の改善を促す有望な戦略であることが強調されています。²

科学的な裏付け

スタンフォード大学医学部の研究者によると、発酵食品を多く含む食事は、腸内微生物の多様性を高め、炎症の兆候となる分子を減少させることが示されています。³ ヨーグルト、ケフィア、発酵させたカッテージチーズ、キムチ、発酵野菜、漬物、紅茶キノコ（コンブチャ）などの食品を摂取すると、微生物の多様性が全体的に増加し、摂取量が多いほどその効果はより強力になります。

さらに、ヨーグルトやケフィアなどの発酵乳製品には、多様な微生物が含まれており、その摂取は腸内細菌叢の多様性を高めます。⁵

別の研究では、発酵食品の摂取が腸の健康を促進し、免疫システムを調節できることが示されています。³ 特定のプロバイオティクスを摂取することは、腸の恒常性を回復し、炎症と戦い、免疫システムをサポートする強力な手段となる可能性があります。

有益な細菌の増殖と免疫力

発酵により食品中の糖分が分解され、有益な細菌が増殖します。これらの細菌は、免疫力を高める化合物を生成します。さまざまな種類の細菌が食品の発酵を促進し、その機能も異なります。以下に、各種類の細菌と免疫の関係を示します。

乳酸菌

乳酸菌は、糖などの炭水化物を分解して乳酸をつくる細菌の総称で、ブルガリア菌、ガセリ菌、ラブレ菌など数百種類が存在します。有益な細菌の代表格であり、腸内環境を改善し、免疫細胞を活性化します。⁴ また、血液や組織内の免疫細胞である「マクロファージ」を活性化し、異物を攻撃する能力を高める働きもあります。乳酸菌は、ヨーグルトやチーズなどの発酵乳製品の製造に欠かせません。

一部の研究では、乳酸菌が消化を助け、免疫力を高め、特定のがんの予防にも役立つ可能性が示唆されています。² しかし、これらの潜在的な健康効果を確認するには、さらなる研究が必要です。

酵母菌

酵母菌は、出芽によって繁殖する単細胞の菌類です。大きさは種類によって2～50マイクロメートルと様々です。パンやアルコール飲料の製造に使用され、βグルカンを含んでいます。βグルカンは消化吸収されず、腸内の免疫細胞に直接作用して免疫力を高めます。⁴

麹菌

麹菌は、味噌、醤油、みりんなどの日本発祥の調味料や発酵食品の製造に使用されます。アスペルギルス・オリゼー（Aspergillus oryzae）というカビを米に植え付けて作られ、このカビが米の炭水化物を分解し、独特の風味を生み出す酵素を生成します。麹菌が生成する酵素は、消化と吸収を促進し、オリゴ糖を生成します。オリゴ糖は善玉菌を活性化させ、免疫力を高めます。² 

酢酸菌

酢酸菌は、アルコールを酢酸に変換し、お酢を作ります。酢酸菌にはプロバイオティクスとしての特性があり、腸の健康を促進します。また、腸内の免疫細胞を刺激し、免疫力を高め、アレルギー症状を抑制する効果があります。² お酢を食事に取り入れる際には、生きた酢酸菌が含まれている高品質な製品を選びましょう。

納豆菌

納豆菌は、大豆を発酵させて納豆を作るのに不可欠な菌です。熱や酸に強い性質を持ち、生きて腸まで届きます。納豆菌は、腸の免疫機能をつかさどるパイエル板の外側にある「M細胞」に付着し、免疫細胞を活性化します。これにより、異物から体を守り、腸の健康を総合的に改善します。

納豆は、日本の伝統食品であり、独特の強い風味とねばねばした食感が特徴です。タンパク質、食物繊維、ビタミンなどの栄養素が豊富で、プロバイオティクス効果も期待できます。⁴

発酵食品を取り入れて免疫力アップ

これらの発酵食品は、腸内細菌叢の機能を向上させ、病気の原因となる細菌の数を減らします。発酵した果物、野菜、穀物は、腸の健康を促進し、免疫システムをサポートし、炎症と戦うのに役立つ有益な微生物、ビタミン、ミネラルを豊富に供給します。² 

発酵食品は、強靭な免疫システムの維持に関心のある方にとって、健康的な食事の一部となるべきです。これらの食品は、健康を維持し、感染から体を守るために役立つさまざまな健康効果をもたらします。さらに、多くの発酵食品は、ビタミンC、鉄分、亜鉛など免疫力を高める栄養素を豊富に含んでいます。これらの栄養素を摂取することで、免疫システムが正常に機能するようサポートできます。

発酵食品を積極的に取り入れて、健康な毎日を送りましょう！

参照先：

 Wang X, Zhang P, Zhang X. Probiotics Regulate Gut Microbiota: An Effective Method to Improve Immunity. Molecules. 2021 Oct 8;26(19):6076. doi: 10.3390/molecules26196076. PMID: 34641619; PMCID: PMC8512487.

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