ホメオスタシス
ホメオスタシス
ホメオスタシスとは生物の生理系が正常な状態を維持する現象を意味する言葉で、homeo(等しい、同一、という意味)と、stasis(平衡状態、定常状態の意味)を結びつけて,アメリカの生理学者キャノンW.B.Cannonが1932年に提唱した言葉です。恒常性とも訳されます。 Homeostasisの意味は内部環境は固定的な状態ではなく、変化しつつも安定した状態にあることを意味します。
最近の生物学において、ホメオスタシスは生物個体レベルだけに当てはまるものではないとされています。例えば、自然界のある場所に生存するすべての生物群と、それを取り巻く環境要因を含めて、社会的・生態的関係が安定している状態を生態学的ホメオスタシスと呼び、動物の行動様式が一定なことは行動学的ホメオスタシス、あるいは心理学的ホメオスタシスという発生学的ホメオスタシスは常に動的な生物の一生において、ぞれぞれの発生段階で質的な変化をともないながらも、その段階を維持している状態を指します。
ホメオスタシスは生命活動の基本であり、これが正常に機能しているから生態は命を維持することができます。生理学的恒常性の多くは自律神経系、内分泌系、免疫系によってコントロールされます。 様々な要因がシーソーのようにバランスを取り合っている「恒常性」ですが、私たちの目的、行動、生活様式によって邪魔な存在になることがあります。 いわゆる「反動」として跳ね返ってきます。全力疾走をした後は体の酸素が不足し、呼吸を荒くして多くの酸素を取り入れようとします。○週間プログラム!腹筋バキバキにする方法、などで短期間のうちに体重を落とした方は、リバウンドしやすい状態である俗に言うヨーヨーダイエットもそうですね。真夏の季節にクーラーがガンガンかかっている室内に滞在し、自律神経の働きが悪くなりうまく体温調節できなくなってしまい不調になるのも恒常性のメカニズムから説明できます。
バイオハッカーが自身のQOLを高める為には基本的な生理学を把握する必要があります。特にホメオスタシスを支える神経系と内分泌系はそれぞれ役割分担があり、神経系は速い情報伝達に、内分泌系はそれに続いて短期的、長期的な遅い情報伝達に関わっています。また、お互いに神経伝達物質やホルモンを介して相互作用します。
自律神経
情報伝達を行う神経である末端神経は「体性神経」と「自律神経」に分かれます。手足を動かす体性神経は意識でコントロールできますが、自律神経は自由にコントロールできません。文字通り24時間休まず働いている自律神経は生命の根本を維持する呼吸、循環、消化体温、発汗排尿などの不随意性の機能を制御します。そして更に交感神経系と副交感神経系の2種類の神経に分けられます。「交感神経」「副交感神経」はよく、車のアクセルとブレーキに例えられます。アクセルとブレーキの両方を交互に使いながら安全運転をするのと同じように、人も交感、副交感神経のバランスをとりながら生活します。英語では「Fight or Flight」闘争か逃走反応の主な原因として交感、副交感神経のアンバランスが言及されています。
現代社会で普通に生活していると、「ストレス」を感じます。満員電車での通勤、睡眠不足からのカフェインの過剰摂取、スマートフォン、PCの長時間使用はあなたの交感神経が活性化し、「戦闘モード」にさせます。我々の祖先が大昔に経験した「戦闘モード」は大自然で猛獣に追っかけられている時でしょうか?考えてみてください、無意識に行っている「普通な行動」が、生理学的に、あなたを「常にライオンから全速力で逃げている状態」にしているかもしれません。 一方、仕事から家に帰宅した後、美味しいご飯を食べた後、ヨガクラスを受けた後などはは副交感神経が活性化し、身体は落ち着いた状態に戻っていきます。このような状態は良い消化、深い睡眠を得る状態になっています。
内分泌系
内分泌系は体の成長代謝機能の維持、生殖活動、分泌調節など生体の持続的機能の調節に働きます。内分泌系は血管や細胞を通し、身体内へホルモンなどを分泌する作用です。一方、対義語の外分泌系は汗、唾液、消化液(胃液など)は分泌する組織や臓器から導管という管が出ていて、ここから分泌されます。このような分泌を外分泌と呼び、これを行なう組織や臓器を外分泌腺と言います。発汗作用など身体の外へ物質を出すことです。内分泌系は分泌するホルモンの種類や量を調整して恒常性を維持しています。私は英語でホルモンを説明する時、「Chemical Messenger」と言います。上記のストレスが溜まり、自律神経が「ライオンから逃げている状態」の交感神経が活性化している状態の例をそのまま説明すると、カテコールアミンという神経伝達物質の化合物が放出され、最終的に副腎髄質からホルモンとして興奮作用のあるアドレナリンが分泌されます。ホルモンは液性因子として体の隅々まで行き渡り、受容体があるところに情報が伝えられます。神経組織が届いているところのみ情報が伝わる神経系との大きな違いはそこにあります。 神経が興奮状態、分泌するホルモンも興奮を促す、つまりアクセルを踏みっぱなしの状態ですね。ライオンから逃げるときは必要なコンディションかもしれませんが、常にこのような状態では疲弊してしまいます。
免疫系
免疫系は免疫を亢進させる系と過剰な免疫反応を防ぐ抑制系があり、病原微生物などの異物の排除、創傷の修復・治癒などの現象はストレスから体内環境を守る生体防御反応であり、個体としての恒常性の維持に働きます。安定した生体防御反応が機能していることを免疫恒常性と呼びます。異物やストレスに対する防衛反応は脳で制御されています。生体は病原体が侵入すると、脳からのシグナルによって、それに対抗する免疫システムが稼動します。すべてのストレスは脳で統合され、処理されます。その結果、神経伝達物質やホルモンによって体の隅々までに対処する方法の指示を出しています。
ストレスと免疫の関係が注目されるようになり、一般的に「ストレスが免疫力を低下させる」と言われます。しかし、そのメカニズムに関しては十分な科学的根拠が得られているわけではありません。しかし最近では、国立がん研究センターが行った研究によると慢性的なストレスを感じている場合は、癌が発生しやすい状態であり、かつ免疫が低下することにより、その発生や増殖を助長しているような状態が維持されるということです。
「病は気から」と言われるようにストレスで交感神経が活性化すると、上記で述べた状態以外にも消化器官の機能低下、腸内細菌の不調が神経を介して脳に伝達されて体全体の不調をきたす場合もあります。
フィードバック制御
フォードバック制御(Feedback control)は、ある代謝系において結果の情報を原因側に反映させることです。上記で説明した3つのシステムが2種類の「フィードバック」があります。生体内では、ある反応系における産生物が、その反応系を自己調節するメカニズムです。
正のフィードバック(Positive Feedback)と負のフィードバック(Negative Feedback)があります。 負のフィードバックはその反応系が進みすぎないように制御する、すなわち産生(例,ホルモンなど)が、その生成過程経路の要所に働きかけ、産生速度を低下させ、結果的にその反応系を減速あるいは停止させるような制御です。負のフィードバックから説明した理由は理解や想像がしやすいからです。よくプロスポーツや五輪競技で問題となっている「アナボリックステロイド」ですが、外部から摂取することにより血中の男性ホルモンが上昇します。しかし負のフィードバックでは高い血中濃度が続くことにより、抑制性が働きかけ、人体が作り出す指令の刺激がなくなり、自らの組織から分泌することをしなくなってしまいます。
一方、生のフィードバックは、ある代謝や合成で作られた産生物が、更にその産生物の代謝や合成を促進するシステムです。幸せホルモンや愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンを例に挙げると、オキシトシンが分泌されると子宮筋が収縮し、それが神経反射を介して間脳を刺激し、オキシトシンがさらに分泌され分娩が起こります。オキシトシンは赤ちゃんが母乳を飲むときに、お母さんの乳頭を吸引する刺激によって分泌が促進されます。そして乳腺の筋線維を収縮させて乳汁分泌を促します。これが生のフィードバックです。
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