サプリメントは必要か?

by 松田干城

「どのようなサプリメントを摂取すればいい?」「なぜサプリメントを摂取すべきなの?」「本当にサプリメントは必要なの?」といった質問をよく受けます。健康的なライフスタイルを送っている読者の皆さんは野菜をたくさん食べて、睡眠を優先し、綺麗でミネラル豊富な水で水分を補給して、できる限り太陽の光を浴びている日々をお過ごしでしょう。

バイオハッキングの分野でサプリメントはとてもホットなトピックです。生産性、集中力の向上からミトコンドリアの機能を向上させるサプリまで世の中には溢れています。

なぜ健康やフィットネス、アンチエイジングの分野でサプリメントがゴリ押しされていたり、摂取する必要があるのでしょうか?栄養価の高い食品、水、そして規則正しい生活をしていれば重要なビタミン、ミネラル、抗酸化物質は十分に摂取できるはずですよね?

しかし、現代ではサプリ業界のマーケットは膨れ上がり、製品やメーカーによって品質はピンキリです。さらに、サプリメントには危険が伴い知らないうちにドーピング検査に引っかかったり、副作用に悩ませられたり、情報過多の広告に踊らされて困っている消費者も多くいます。

そこでこの記事では、健康的に自身のウェルビーイングに向けたライフスタイルを送っている読者の皆様に「私にとってサプリメントが本当に必要か?」という問いに対する悩みをサポートする情報をこの記事にまとめます。(すべて研究に基づいています)

サプリメントが必要である科学的理由

まず始めに、現代の産業革命以降の汚染された毒素まみれの環境下、そして現代のライフスタイルでは食品で補える以上の栄養素が必要です。

PCやスマフォの画面がサーカディアンリズムやクロノバイオロジーに影響を与えていたり、仕事のプレッシャーや慢性的なストレスに悩み続いていたりと、現代生活の慢性的なストレスは栄養素の必要量を増加させます。

大気中の汚染物質、飲料水に含まれるプラスチックの劣化した副産物、洗浄剤に含まれる化学物質、食物に含まれる農薬など、毎日、何百種類もの有害物質にさらされているため、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質に対する体のニーズがさらに高まります。これらの栄養素は毒素を自然な解毒経路に送り込み、DNAにダメージを与えるフリーラジカル(遊離基)の生成を防ぐために必要です。激しい運動も体に必要な栄養素を増やすストレスです。

さらに、この記事を読んでいる多くの人のようにハードな運動をしているバイオハッカーの場合、必要な栄養素の量は座っている時間が長い一般の人の推奨量をはるかに超えています。

昔と現代の食品に含まれる栄養素の違い

さらに、前の世代が食べていた食品と比べると、我々が食べている食物からは十分な栄養素を摂取できていない可能性が高いのです。現代の農業技術や肥料によって、ほとんどの土壌は栄養不足に陥っており、従来の農作物に含まれる有益なビタミン、ミネラル、抗酸化物質は減少しています。

では、究極の解決策は有機栽培のオーガニック食品を摂取することでしょうか?有機栽培された食品は非有機栽培の食品に比べてより多くの栄養素を含んでいるという研究結果もありますが、大きな違いはないという結論も出ています。さらに、人類の歴史の大半において、私たちの祖先は今ではほとんど絶滅してしまった野生の塊茎(地中に生えるデンプン質の茎)などの、細胞が密集した炭水化物を食べていました。これらの炭水化物はプロバイオティクス細菌の繁殖に不可欠なプレバイオティクスを供給していました(現代の炭水化物を構成する精製された穀物や白米とは対照的です)。

精製された炭水化物や加工食品は血糖値を大きく変動させ、私たちの祖先が経験してこなかった血糖値の乱高下を引き起こします。コーヒーショップやコンビニエンスストアで手軽に購入できるスナック、菓子パンなどを見れば、多くの人が午前中に血糖値の低下が起こり、数時間後にお腹が空いて食べ物を必要としている状況を簡単に説明できます。血糖値のバランスが崩れると、慢性的な炎症を引き起こし、アルツハイマー病肥満うつ病がんなど、現代病の最大80%に関与していると言われています。

脂質(必須脂肪酸の比率)

炭水化物以外の栄養素に注目してみても、一般のスーパーで売られている肉、卵、乳製品は野生動物や放牧された動物のものに比べて、オメガ3脂肪酸などの抗炎症作用のある栄養素が少ないと言われています。オメガ3系脂肪酸といえば欧米の食生活はオメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸の比率が偏っており慢性的な炎症が起こりやすい状態になっています。モダンな日本食の必須脂肪酸オメガ3と6の比率も同じようなものです。

さらに複雑なのは現代のアメリカにおいて収穫、輸送、加工、保存の技術は食品の栄養分を劣化させるということです。現代の肥料を使って栽培された植物は伝統的な農法で栽培された植物の25%しか微量栄養素を含んでいません。

添加物や処方薬による影響

米国農務省のAgResearchによると、スーパーで買うリンゴは1-メチルシクロプロペンで処理されている可能性が高く、10ヶ月も前に収穫されたものかもしれません。

常識的に考えても採れたてのリンゴの方が栄養価が高いですし、日本にアメリカ産の輸入りんごが流通しているかわかりませんが、材料として輸入されてジャムやジュースに加工されているかもしれません。

また、「新鮮さ」を維持するために使用される保存料は食品の栄養素の生物学的利用を妨げ、これらの合成添加物を処理するために体がより栄養素を必要とする可能性があります。同様に処方された薬を常用している方に至っては逆流性食道炎高血圧症の治療薬の多くも栄養素の吸収を阻害する事も知っておく必要があります。

また、ビタミンDのような脂溶性ビタミンにも注目する必要があります。十分なビタミンDの推奨量については議論がありますが、多くの日本人は十分なビタミンDを摂取していないと言っても過言ではありません。特にコ◯ナ下の自粛生活で外出時間は減っていると思います。朝の散歩や昼食時に外に出るなどして日光を浴びるように努力していても、屋外で生活していた祖先のように日光(を通じてビタミンD摂取量を増やすこと)を浴びる時間の差は歴然です。

最後に、人間は年齢とともに食べ物から栄養を吸収する能力が低下します。カロリー制限が長寿の秘訣であることが科学的に証明されているのにカロリー摂取量を無視して食事量を増やせば栄養が摂れるという理論は馬鹿げています。カロリーを抑えるなら栄養素が高い食品を選ぶ必要性がなおさら高くなります。

アンチエイジングを目的とした戦略的断食、プチ断食、カロリー制限などの方法を日常生活に取り入れて長生きしたい人にとってはサプリメントは必要かもしれません。

祖先はサプリを飲んでいないのに、なぜ現代人に必要なの?

バイオハッカーセンターJapanは最新のテクノロジーを活用するのと同じ、またはそれ以上に、先人の知恵を使って自信の人生を最適化することを目的としています。先人の知恵と現代科学の融合が我々を目指すウェルビーイングに導いてくれると信じています。

「昔の人はサプリメントを摂取していなかった」という意見は事実に反します。古代のサプリメントには症状に合わせて飲む根・茎・葉のお茶や臼と杵で挽いた薬用の粉、高濃度のオイル抽出物などがあります。これらの栄養補助食品は現代の象徴的な形「いかにもサプリメント」であるカプセル、錠剤、パウダーに見えないからといって、サプリではないということにはなりません。

実際、私たちの祖先は土を食べていました。土にはさまざまな有益なプロバイオティクスが含まれていることがわかっています。さらに、昆虫やチンパンジーなどの動物は、特定の植物を摂取することで自己治癒力を高め、サプリメントを摂取しているという説もあります。さらに、現代人が食べ物を入手、調理、食べる方法は私たちの祖先とは大きく異なり、栄養素の摂取と吸収のプロセスが異なります。

例えば、欧米諸国では主に動物の筋肉だけを食べ、コラーゲンの多い結合組織はあまりメジャーではありません。一方、私たちの祖父母は動物の死骸を何時間も煮込み、結合組織からコラーゲンやゼラチン、脂溶性ビタミンなどを摂取していました。アメリカではコラーゲンプロテインなどが流行っていますが、我々日本人はそもそも、もつ煮込み、旨味を中心とした食文化でバランスよく必須アミノ酸を摂取してきました。

皮肉なことに、日本が誇る食文化や先人達が食べていたスープや「もったいない」精神で動物丸ごと骨も内臓も全て食べていた”食べ物”はiHerbで日本の皆さんが海外から購入するグルコサミン/コンドロイチン配合の関節用サプリメントや、今流行りのボーンブロス商品に相当します。

 

今後、サプリメントに関する正しいものの見方、日本と海外の違い、足し算と引き算を皆さんと一緒にすることで、より健全で多くの人に有益な交通整理ができるようにサプリ関連記事を更新していきたいと思います。

 

このページの記述は以下の文献に基づいています。

 


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