温熱療法:伝統的なサウナと赤外線温熱室の健康効果
熱暴露
ヒートショックプロテイン
体内における熱ショックタンパク質(HSP)の生化学的機能
- HSPはフリーラジカルの蓄積(酸化ストレス)と細胞障害を防ぐ
- HSPはオートファジー(傷ついた細胞を再生させる体内の主要なメカニズム)と同様に、傷つき、誤って折り畳まれたタンパク質を修復する
- HSPはグルタチオン(体内の抗酸化物質)と共に細胞の抗酸化力を促進する
- HSPはマクロオートファジーと細胞のターンオーバーに関与する
- HSP20のリン酸化は平滑筋の弛緩と相関し、心筋細胞(特殊な心筋細胞)の機能と骨格筋のインスリン応答(血糖調節)に重要な役割を果たす
オートファジーを高める熱ストレス(例:絶食状態)により、より大きな効果が得られますが、低温暴露による熱変化も含まれます(寒冷暴露についてはこちらを参照)。オートファジーは細胞が自らの一部を分解する作用(自食作用)のことですが、状況によってアポトーシスを強化するか抵抗するか変わります。
アポトーシスとはプログラムされた細胞死のプロセスで損傷した細胞や不要な細胞を排除します。細胞機能の正常な一部ですが、過剰になると組織の損傷につながる可能性があります。
熱ショックによるオートファジーがアポトーシスにどのように影響を及ぼし、その後の細胞の変化のメカニズムはまだ明らかではありません。こちらの論文によるとミトコンドリアのオートファジーはヒートショックによるアポトーシスを防ぎます。オートファジーを阻害したままサウナに入れば、必要以上に細胞にダメージを与えることになりかねません。そのため、絶食状態/または寒冷曝露を取り入れる(熱と冷却の両方)ことで、オートファジーの増加により、傷ついた細胞成分がより効果的に除去され、細胞がアポトーシスを起こす可能性が低くなるためだと考えられています。
さらに、熱ストレスと寒冷を交互に与えること(コントラスト療法)についても、ストレス反応の幅が広がるため、より幅広い保護メカニズムが得られるため、有益であることが示唆されています。
よって熱暴露の効果を最大限に引き出すためには絶食状態でサウナに入るか、少なくとも食後4~5時間待ってからサウナに入り、アルコール飲料の摂取を避けるのが賢明です。
ヒートショックプロテインを活性化して、オートファジーを最大限に活用するための方法
- 16時間の絶食
- 20~30分の運動
- 温熱&寒冷セッション
- サウナで15分×3回
- その間に2分間の低温浴を行う(水風呂・冷水シャワー・外気浴)
Nrf2-熱ストレスの重要な生化学的経路
Nrf2は細胞内に存在する転写因子で、通常は細胞の一部である細胞質にいます。しかし、Nrf2が活性化すると、細胞のコントロールセンターである核に移動します。ここでNrf2は特定のタンパク質を作り出す働きをします。これらのタンパク質は、細胞を有害な物質から守る役割を果たします。これは細胞が体のダメージ(酸化や電子が不足する状態)から身を守る主要な方法です。Nrf2がどのように働くかは、他の細胞内物質との相互作用によって調整され、その結果として細胞はストレスにどのように反応するかを決定します。このプロセスの一部として、細胞は自己修復のためオートファジーを行うことがあります。
出典:酸化医学と細胞長寿 Nrf2-Keap1-HO-1経路
FOXO3タンパク質と熱ストレス
サウナや温熱療法の生理学的効果
熱ショックタンパク質(HSP)が活性化の効果
- サウナに入ることで、心肺機能が向上し、心臓病のリスクが下がる
- 定期的なサウナ(週2~3回)と心停止(22%)および冠状動脈性心臓病のリスクが低いという関連性があります。サウナの頻度や時間が多いほど、健康上のメリットは大きくなります。
- 週に4~7回サウナに行く人は、週に1回利用する人に比べて、心停止を経験する確率が63%、心血管系疾患で死亡する確率が50%低くなりました。また、全死因死亡のリスクも40%減少したとのことです。
- サウナは血糖値を下げるのを施し、筋肉に誘導するGLUT4というグルコーストランスポーターの発現量を増やすことで、インスリン感受性を向上させます。
- 週に3回、12週間、たった30分のサウナなどの温熱療法を行うだけで、インスリンと血糖値が31%低下したそうです。血糖値の変動やコントロールの管理に有効です。
- 熱ストレスは大量の成長ホルモンを分泌させ、タンパク質の分解を抑制します。成長ホルモンはサウナ後数時間上昇したままであり、筋肉の分解を防ぐ驚異的な抗異化作用があり、さらに脂肪燃焼を促進することができます。
- 断食状態で短時間のサウナに入ることは、長時間の断食とは良い相性
- 摂氏80~100度のサウナを20分×2回、間に30分の冷却する休憩を入れると、成長ホルモンの分泌が2~5倍になる可能性があります(温度が高いほど、成長ホルモンの分泌は多くなります)。
- 80℃(176°F)の乾熱で1日2回1時間のサウナを7日間続けると、3日目に成長ホルモンが16倍増加することが示されたそうです。
- 熱ストレスは免疫力を強化し、白血球を増加させます。また、毒素や病原体からリンパ系を洗い流してくれます。
- 1回のフィンランド式サウナ入浴は非アスリートよりもアスリートに対してより効果的: 白血球のプロフィールでは白血球数、リンパ球数、好中球数、好塩基球数の増加が報告されました。サウナ入浴後の白血球と単球の増加は訓練を受けていない被験者と比較して、アスリートグループでより高く記録されました。結果はサウナ入浴が訓練を受けていない被験者と比較して、アスリートグループにおいて、より高く免疫系を刺激しました。
- 高熱コンディショニング(サウナなど)は認知症やアルツハイマー病のリスクを下げる(フィンランドの中高年男性を対象とした研究)。
サウナと免疫系
- ある研究では週に2~3回、または4回以上サウナに入ることで、週に1回未満のサウナ通いのグループと比べ、呼吸器系疾患がそれぞれ27%、41%減少することが実証されました。また、肺炎のリスクもそれぞれ33%、47%減少したとのことです。
- 風邪の症状も、週に数回サウナに入る人は、入らない人に比べて半減することが確認されています。このように、サウナや他の形態の高熱コンディショニングが、風邪やインフルエンザ、その他の呼吸器疾患の有病率を低下させる可能性があります。
- ヒトの細胞実験では、高体温がインターフェロンの抗ウイルス作用を3〜10倍高めることが示されています。サウナに15分程度入るだけで、白血球数やリンパ球が増加し、免疫系が刺激されることが確認されています。
- また、暖かい空気を吸い込むことで、風邪の症状が軽減されることも確認されています。ある無作為化単盲検比較試験では急性風邪感染症の患者さんが、乾燥した外気と比較して、高温で乾燥したサウナの空気を口から2日間吸い込むと、症状が著しく軽減されることがわかりました。
サウナ&身体運動
- 血液循環と骨格筋への血流(一酸化窒素の影響)が良くなると、グリコーゲンの枯渇速度を抑え、筋肉への酸素輸送の効率を高めることができます。
- 高温コンディショニングは筋グリコーゲンの使用量を40~50%減少させ、運動中の乳酸蓄積を低下させることが確認されています。心臓のストローク量を増加させることにより、身体的持久力を促進します。
- 週2回のワークアウト後に30分間のサウナセッションを3週間行ったところ、参加者の疲労困憊までの走力がベースラインと比較して32%増加しました。
- また、血漿量を7.1%、赤血球数を3.5%強化することができます。これは持久力を向上させ、筋肉の成長やレジスタンストレーニングに役立つと考えられます。
- サウナは運動やあらゆるストレスからの回復を早めてくれます。運動することで生じる炎症を抑え、運動後の筋肉痛(手首伸筋の研究)を軽減します。
赤外線ヒートルーム(サウナ)療法
和温療法
- 体内の酸化ストレスを軽減
- 運動からの回復を早めます
- 短期的および長期的な痛みを軽減する可能性
- 赤外線による微小循環の増加や深部発汗により、身体の解毒を促進する可能性
- 症状を大幅に緩和することができるため、慢性疲労症候群の治療法として利用される可能性(和温療法)
- 2018年のメタアナリシスでは60℃の赤外線サウナに15分間曝露した後、暖かい環境で30分間の休息を週5回、2~4週間続けた場合、B型ナトリウム利尿ペプチド、心胸郭比の有意な減少、左心室駆出率の改善と関連
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